大学並み設備で科学探究
ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊・東京大特別栄誉教授らをスーパーアドバイザーに迎えた横浜市立の「横浜サイエンスフロンティア高校」が来月開校する。充実した教育環境で未来の日本の科学技術を担う人材の育成を目指す。
電子顕微鏡、DNA(デオキシリボ核酸)解読装置、質量分析装置――。普通の高校の5倍近い20室もある実験室には理工系大学並みの設備が並ぶ。談話室や廊下にはパソコン400台が配備されている。「公立高でこれだけの設備はちょっとない」と小島理明教諭は胸を張る。
こうした機材を使えば、授業などで、近くで捕まえたクワガタが外来種かどうか遺伝子を調べたり、河川敷のヨシがどこの群落から来たかを特定したりすることもできる。
授業の目玉は週2時間、20人の少人数クラスで行う課題探求型の学習。大学や企業の研究者が、生命科学やナノテクノロジーなど最先端の科学技術を紹介するだけでなく、自分たちで課題を設定して、実験や討論を行う。2年生の最後には、成果を英語で発表する。
土曜日も隔週で、東大や横浜国立大、理化学研究所などを見学したり、小柴教授の講演を聞いたりする計画だ。
英語の副読本は、欧米の中学生向けに書かれた地球温暖化の解説本を使う。実用英語を学ぶため、夏休みに、外国人の若手研究者を招いて英語で実験を行うイベントも予定している。
今春の入学試験では人気を集めた。調査書や面接で合否を決める前期選抜の競争率は神奈川県の公立高トップの5・21倍、後期選抜でも1・82倍だった。
学習塾「中萬学院」によると、合格レベルは公立の最難関校に近く、鈴木道博・情報課長は「充実した設備や教育体制、清新な印象が評価され、意欲の高い生徒が集まった」と分析する。
新入生237人中、女子は68人と約3割だった。横浜市の小寺由夏さんは「理科が好きで高度な内容を学びたかった。将来は宇宙開発に携わりたい」と夢を膨らませる。
佐藤春夫校長は「生徒たちには、様々な実体験を通じて、将来の夢や進路を具体的に考えてもらいたい。サイエンスを幅広く学び、関心を深める高校のモデルにしたい」と抱負を語っていた。